　元禄10年丁丑仲秋吉日銘　　　支那国嗣祖沙門道宗悦山敬いて南岳に撰す。

　摂州能勢郡吉川村七宝山高代寺は密宗の古跡なり。乃ち人皇62代村上天皇の天徳年中、源満仲厳君の為に廟を建立すなり。落成の日延べに仁和寺寛空僧正を開山の祖となして、住持の代を相継し、人を乏しとせざりし。歴年既に久しく乃ち弊(すた)れ、壊するに至れり。人皇71代後三条院の延久年中、満仲四代の孫源頼仲再興す。その後年代遼?(りょうばく)(はるかかなた)し、寺は又も荒廃し、僧衆ら守り難く、これを棄つ。而して去る古にはありし金堂、ありし講堂に弥陀仏を安ぜしも、ありし宝塔、ありし護摩堂、ありし食堂、ありし鐘鼓二楼、ありし僧房十二たりしも、今に存する所は僅(わず)か薬師のみ。近年秀順阿闍梨飛錫(ひしゃく)して徘徊するに至り、顧みあおぎ見ること有るに、悽(せい)然(ぜん)(いたましい) の思い乃ち興り、その徒ら結廬(けつろ)(いおりをむすび)し、以って居となし、仍って一茅堂を建て、薬師如来に奉り、念ずるごとに壊の相をなせり。乃ち古今不易の理にして、鐘は昏昕(こんきん)(朝夕)を警するゆえんなり。以ってすみやかに図らざるべからず。遂に硫募り鋳と化し、その新鐘を作り、諸方檀信らのために福田九幽(黄泉)生死・長夜を開く。その功は偉しと謂うべし。予は銘のために請けて銘に曰く。惟れ高代寺は、天徳の帝の時、源満仲の親の福のために梵字をぬいあわせ、きわめて高き青天は尺尺として、美しく飾った門や甍をかざり、輝ききらめき金碧たり。夢幻の世界を成すあり。壊あり。頼仲再興の法門はこれ頼の念なり。遼?(りょうばく)代わりて寺は又傾剥し、今闍梨あり、気岸(心のしっかりした)さ超卓し檀信らの縁(ゆか)り募り、鉅鐘(大きな鐘)新たに鋳し、仏の慈悲を体し、冗趣(無駄なおもむき)を振り祓う。その音声を聞くに円通のその功徳は、涯天(天のはて)の龍を靡(なび)き擁護すなり。(以上読み下し　飯島正明)

高代寺歴代住職　

(※は吉川氏から入山)　　　―は東大史料編纂所蔵「高代寺記」より補う

_開山961

　寛空(991寂)―寛運.2(～1075 寂)―慶朝.3(～領地没収1083辞)―快実.4(1085～)―勝実.5(1103～1120寂)―無住(～1122) ―

寛実.6(1125～1133円宗寺へ)―無住(俊賀間坊1136)―頼賢.7(1136菩提より1154隠居)―寛詮.8(1154～1162仁和寺へ) ―頼尊.9(1162～1179)

―※全快.10(～1204)―※定快.11―※寛清.12(寛信1260～1279)―頼乗.13―※光智.14(1336～1355) ―宗信.15―

※宗玄.16(1384～1396)―玄清.17―※快清.18(1406～1428)―快全.19―専海.20―秀全.21(1503隠居仲ノ坊)―快賢.22(呉庭庄坂上教信)

―快意.23―快善.24(善久と改)―秀栄.25―景運.26―秀順.27(高代寺日記終り)―秀璉.28―快澄.29―快賢.30―快恵.31 ―快応.32―

快伝.33―秀成.34―随応.35―観了.36―弘道.37―了海.38―弁澄.39(松村)―照空.40―秀淳.41―貫秀.42―一秀.43―興秀.44

―一秀.45(山内)―耕秀.46(福永)

高代寺間主(代わって住職を務めた)

　東ノ坊(1009年5月) 杉本坊(1000年5月) 教覚坊(1011年5月) 橘坊(1023年5月) 東ノ坊(1032年5月)　

常覚坊(1035年5月) 同坊(1057年5月) 尾崎坊(1070年5月) 一人坊(1071年5月) 福寿坊(1072年5月)　

間主終わり　俊賀坊(112 0年9月～22年8月)　同坊(1133年3月～1136年7月)

6寛実は源師光の孫　7頼賢は源頼資の孫　8寛詮は源師時の孫　9頼尊は源仲政の孫

※ 治承三年　越後守(仲頼)一家の後胤10全快。

※ 建仁四年　全快寂。11定快、源隆常(経)判官代弟。

※ 承元二年　紀氏。仲頼養子となり高代寺に住持12寛信(寛清)。

※ 延元二年　源太頼久の子14光智、頼乗のあと住持。

※ 応安六年　16宗玄、吉川判官代頼元の子。

※ 応永三年　18快清、池田修理亮の弟。越後守末孫。「高代寺記」より

　　 30快賢　坂上田村麻呂子孫、坂上正氏子。「坂上氏系図」より

29快澄横大路村の人　36観了摂津小野原村の人　37弘道止々呂美村の人　40照空川尻法輪寺より

「吉川小学校100周年」より

代々の住職の石塔　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　左から秀璉和尚・秀順和尚・秀栄和尚の石塔